零戦と隼の見分け方がよくわからない、という人が多いのではないだろうか。
そう推察するには理由がある。
たぶん、当たり前過ぎて人に尋ねられないのと、もし見分けられないことが人に知られたら恥ずかしいという、日本人独特の恥の感情が背景にあるのではないか。
ドナルド・キーンの著作の中に、似たような表現があった(恥ずかしい、という部分)。
そこで備忘録として、零戦と隼の見分け方を自分なりにまとめてみたいと思う。
日の丸ついていればだいたいゼロセン
まず零戦と隼がそれぞれなんなのかを明らかにしておこう。とくに隠されている事実ではないですが。
零戦(レイセン、ゼロセン、ZERO FIGHTER、ZEKE)は、大日本帝国海軍の正式艦上戦闘機の略称だ。本当は零式艦上戦闘機だ。紀元2600年制式採用なので、末尾の0を取って零式(れいしき)、一般的な呼称としてゼロセンがある。
これまで日本が有史以来制作した航空機の中で一番多い種類だ。1万何千機とかです。型式全部合わせてね。真珠湾攻撃のときに空母が乗っけていたやつです。そのほかにも乗っけていたけれども。
零戦は大きく分けて一一型、二一型、三二型、二二型、五二型があります。翼の形状とか搭載するエンジンが違っております。今回の比較対象は二一型です。初期型ですね。
で、だいたい日の丸のついた第二次世界大戦の日本軍の戦闘機は零戦として認識されている傾向があります。敵のアメリカ軍もそう認識していた。誤認されていたのが、隼です。
加藤隼戦闘隊(未見)の主役
隼は大日本帝国陸軍の戦闘機。零式が海軍、隼が陸軍なんですね。ちなみに第二次世界大戦で「空軍」という組織を持っていたのは、イギリスとドイツかな。RAFとルフトヴァッフェですね。アメリカ空軍の創設は戦後。航空自衛隊の創設も戦後。ソ連はどうだったか忘れました。
うちの近所でよく聞くのは、「零戦と隼なんていう、似たような戦闘機を別々に開発してリソースの無駄遣いをしていたんじゃないか」という話とか「どっちか一個でいいんじゃないか」みたいな話です。
本当にそうなのか。
ハセガワの72分の1のプラモデルで違いを比べてみました。
並べてみた第一印象
全幅は零戦が明らかに上回る。1.2倍くらいある? 車格がひとまわり上のような印象です。ホンダでいうとフィットとシビック? トヨタならヴィッツとカローラ?
横から見てもその印象はあまり変わりません。全長はそれほど変わらないものの、キャノピー(風防)のサイズが全然違う。隼はもうどう見ても一人乗りの感じがするが、零戦は後席ある印象。2シーターなのか2+2なのか。911なのかボクスターなのか。そんな感じです。
何が一番違うかって、風防の枠です。フレームです。
隼はシンプルに、縦のフレームが2本。
零戦は、数えるのが大変なくらいあります。7本かな。
なんで同じ単座戦闘機でこんなに違うのか。
ひとつは零戦が艦上戦闘機で、海の上で長時間行動することを想定しているため、居住性を担保するためにキャノピーを大きくしてゆったり感を演出したというものです。
まあ、確かに比べてみると隼はミニマムだな〜という印象だもんね。
あとはなんだろうね。わからないや。
他にもいろいろ違っている点があるので一枚絵にしてご提供いたします。
零戦と隼の見分け方早見表
隼
- キャノピー小さい
- アンテナ支柱がキャノピー前
- キャノピー前がまっすぐ
- 前輪カバー途中まで
- お尻丸い
- キャノピー大きくて枠がたくさん
- アンテナ支柱がキャノピー後部
- キャノピー前が抑揚あり
- 前輪フルカバー
- お尻とがっている
あと、前から/後ろから見たときの相違点は、注目すべきですね。
隼の主翼は前縁部が直線。で、たぶん零戦より上反角がきつい。このため、見る角度によっては主翼が全身浴に見えてしまうこともあるです。前進翼です。
零戦の主翼は、前縁部に後退角がついているのでそんなことはない。
誤認はあったのか?
たぶん、零戦と隼の両方に接触したパイロットなら、両機を間違えることはないと思います。結構違うよ。
ただ、第二次世界大戦の東南アジア方面の戦線では、零戦が配備されていない地域にもかかわらず「零戦と会敵した」という報告があったようです。
これは、「日本の単座戦闘機=零戦」という刷り込みがアメリカ軍パイロットにできていて、「きた!やつだ!零戦だ!」となったけれど、実際は陸軍の隼だったというケースが結構あるのではないかと推察します。たぶん自分以外にもっとファクトベースで推察している人がたくさんいると思いますが、まあいいじゃないですか。
あとこれはプラモデルならではの見分け方なんですけれど、
「尾翼の前の胴体をつまんだときに『細い!』と思ったら隼。思わなかったら零戦」というTipsをご提案して、今回の記事は終わりにとさせていただければと思います。
まとめ
こうやって比べてみると、結構違う機体だな、というのがよくわかりました。
隼はミニマル、単機能。シンプルにして性能を最大限に引き出す。
零戦は、航続距離とか着艦フックとかいろいろ要件が多いのであろうと推察します。
にもかかわらず、なぜあんなに風防がでかいのか。
例えるなら、それくらいの差を感じます。でも、空戦性能で際立った差は出ていない(と思うんですけれど)よね。
隼には疾風という後継機が登場しましたけれど、零戦は終戦時まで生産されたし。なんで零戦はあのディメンジョンなのにイケてる性能を確保できたのか。
誰か教えてください。だって明らかに隼のほうが小回りは聞きそうじゃないですか。