ガンダム山下埠頭に立つ
ガンダムファクトリーに行ってきました。横浜の山下埠頭にあるやつです。非常に暑い日でした。
青空と工事中の埠頭のクレーンとかデリックとかを背景に実物大のガンダムがドックの中に立っている風景は、めまいがするくらい非現実的でした。
トップの写真、俺がスマホで撮影した写真ですよ。なんかのパッケージアートとかじゃなくて。バンダイのオフィシャル素材とかでもなくて。
日本人あたまおかしい。これで日本にある実物大ガンダムって何台になるんでしたっけ? 初代が静岡、お台場にユニコーン、博多にνガンダム、横浜にF00。4台体制です。そろそろ量産型が各都道府県庁所在地に配備されるころかと思います。流れ的には絶対そうでしょう。いずもの空母化より諸外国はガンダムの配備になにかいちゃもんをつけたほうがいいのではないか?ということさえ考えてしまいます。
で、ガンダムファクトリーに行くと200分の1のガンプラをもらえます。もちろん多色成形で指でもいでパチ組みができるうれしい仕様。ただし関節はほぼ可動しません。あと合わせ目はバッチリ出ます。
なぜこんなにすじすじなのか
ご覧いただくとわかるように、スジボリが非常にたくさん入っています。
なぜこんなにスジボリが必要なのだろうか。ガンダムファクトリーにある現物がすじすじしているからしょうがないだろう。たしかにそうです。
しかし。しかし。人形兵器であるガンダムの装甲が、こんなにすじすじしていていいのでしょうか?ザクの120ミリマシンガンを跳ね返すルナ・チタニウム合金でできた装甲が、細かく分割されていていいのでしょうか。
もしかしたら爆発反応装甲みたいになっているので、これはこれでありなんだよ。という意見もあるかもしれません。ふーんずいぶんものわかりがいいですね。
真夏の夜のスジボリ埋め
親からもらった装甲に、こんなにすじすじを入れるなんて許さない。この場合の親はテム・レイです。彼の意図を尊重して、暑い夏の夜に私はすじすじにパテを塗り込むことにしたのです。額に流れる汗は、指先ではなく手の甲で拭います。うっかり指先で拭ってしまうと、額のシワがパテで埋まってしまうからです。
使ったもの
光効果パテじゃないですね。光硬化パテです。こいつは頼りになります。匂いもほとんどしないし、日中だと太陽光ですぐに固まります。固まっても表面がヌルヌル濡れていますが、それを拭き取ればすぐヤスリがけもできます。
浅いスジボリは水性サーフェイサーで、深いディテールは光硬化パテで埋めて削ってやすって再塗装。
アクリジョンのベースカラーホワイトは隠蔽力抜群。白はもうこれだけでいいですね。
できたのがこちら。
パチ組みとの比較
パチ組みと比較してみました。家族で行ったので予備機があるのです。
パチ組は、バックパックが本体同色のホワイトなので、ピリッとしませんね。そして足の裏側がしわしわですじすじだ。後ろから見たら手を入れたあっさり風味のほうがいい感じですね。
ただフロントビューは、パチ組みもなかなかの雰囲気です。ただし筋筋している点は否めませんが。なぜ腰回りにそんなに筋を入れる必要があるんだ。
それぞれクローズアップにした写真もあるのですが、あっさり風味の工作の粗さが出てしまうので公開しません。
太ももの両脇の分割線はあえて手を付けませんでした。これくらい大胆に前後分割されていると、手を入れるのはどうだかな、という気持ちになったからです。
すじすじとコーションデカールの伝統
ガンダムファクトリーに行って面白かったのが、妻が実物大ガンダムの体中に入っているコーションマークを不思議がっていた点です。
そもそもロボットと現実の兵器っぽく見せるために入れたコーションマークが、もう本来の意味を逸脱して単なるデザインになっています。もしくはプラモデルにしたときに情報量を増やして緻密な印象を演出する小道具。
すじすじもそうかもしれません。すじすじは、現実の兵器っぽく見せる(航空機におけるパネルラインや先頭車両における装甲分割線のような)役割だったはずが、プラモデルでいかに見栄えを良くするか、情報量を増やして見た目のインパクトを出すかという方向に役割が変わってきているように思います。
暑い夏が終わり、季節が巡ってまた夏が来て、それを何十回も繰り返すと、すじぼりやコーションデカールは当初の意味を失って、伝統的に受け継がれた意匠・デザインになるのかもしれません。数世代後のバンダイの社員は、20世紀後半から連綿と続く同社独特の徒弟制度に従って、コーションデカールとすじすじの意匠を、その理由を問うことなく師匠から譲り受けていくのでしょう。日本の伝統文化もまだまだ捨てたものではありません。
だがそれで本当にいいのだろうか。わたしは「10分待っていて」と家族に声をかけ、出口付近にある「未来に残そう!ガンダムメッセージ(的なコーナー)」でメッセージボードに「スジボリ多すぎ。そもそもルナ・チタニウム合金は……モノコック構造で……120ミリザク・マシンガンの直撃に耐えるということは……」と思いのたけを限られたスペースに小さな字でぎっしりと書き残して、山下埠頭を後にしたのでした。